第13次研究委員会報告 中間報告

第13次研究委員会

<研究の過程>

第12次研究委員会では、「『ささえる』から『参画』へ~学校事務職員の職務標準~」をテーマに研究をすすめてきました。第13次研究委員会は前次研究成果を定着させるためにテーマを「学校経営に参画する事務職員」と設定しました。参画をより具現化するために、実践例を通して課題を探り、自らの力量、そして学校全体の事務経営・運営機能を高めることを目標にしました。

研究を進めるにあたり、まず全会員に現在の意識と実践例についてアンケートを採りました。アンケート集約から、ライフステージに応じた「ステップアップ職務標準」によって経験の浅い事務職員にも学校経営に参画する意識が高まっていることがわかりました。実践例については「ステップアップ職務標準」の職務領域にあわせ、研究大会において一部を紹介する形で第1次報告をおこないました。

第1次報告以降は、北越評議員会での各県の意見など新しい風を入れながら、次のステップに進めるように話し合いを重ねてきました。地区研究会が取り組んできた実践や個々の実践例を大切にしながら、実際にどうしたらアクションを起こせるか方法を考えています。さしあたって、会員からいただいた実践例を「ステップアップ実践事例集」として配付しました。今後の生かし方として、より具体的な聞き取り調査をおこない、「気づき」から始まるステップアップを達成するためのポイント、行動の手立てを探っていきます。

一方、ステップアップの捉えかたを確認しました。例えば個人的に実力を上げ、事務処理の効率を上げることによって、職員に喜ばれ事務職員の地位向上につながる場合があります。しかし、このことを私たちが目指す「ステップアップ」と捉えていいのでしょうか。というのは、個人的にその学校でスキルを作っても、異動先の学校でもう一度同じステップを繰り返すことが往々にしてあるからです。また、授業等による制約が少ないということもあり、職員が仕事をしやすいようにと行動している事務職員もたくさんいます。その行動により学校がスムーズに機能することもありますが、これも求めている方向とは異なります。その行動が個々のものにとどまり他者が知ることのない状況であれば、事務職員の異動等で以前の状態に戻ることもあるためです。しかしその行動がその学校の解決したい課題に踏み込んだ取り組みであり、異動後もシステムが定着し当該学校の事務改善につながっているのであれば、それは学校にとっての「ステップアップ」という捉え方をします。折しも、文科省通知により、「教員が子どもと向き合う時間を確保」するために、「事務処理体制の見直し・事務職員の活用」が求められています。一人で完結する事務処理だけではなく、協働による事務、そしてそれによる事務機能の強化が求められています。

こうしたことから第13次研究委員会では「学校経営に参画する事務職員」として、学校における課題を解決し、よりよい学校にしていくためのステップアップを考えていくことにしました。学校のステップアップを考える時、問題のあるところ、効率が悪いところといった弱点を解決する方法と、学校においてすでに機能しているところを学校の経営ビジョンに沿って、さらにパワーアップ、レベルアップさせていく方法とが考えられます。

事務職員が取り組むにあたり、まず、底上げしたい課題に取り組むことから始め、とりあえず標準状態に近づけることが効果的であると考えました。それにより、次なるステップアップに事務職員自身も取り組みやすく、学校に受け入れやすい環境がつくられるのではないかと思われます。提案・実行する際、自分が関わっている校務分掌や、自分が関係する業務に学校評価や反省で問題点が出されていれば、提案しやすい状況が生まれます。他の職員も問題点に気づいてはいても、誰かがリーダーシップを取って企画立案しないと動けないケースに踏み込むことによって、解決に周囲の納得、協力を得ることができます。そこで生まれる達成感や連帯感は、事務職員にとっての自信にもつながります。学校経営に事務職員の力が大きく加わることでステップアップし、よいものになっていくのであればおのずと事務職員の職務も確立されていくはずです。

取り組みの方法として、目標、ネライを明らかにし、仕組みが誰の目にも見えることが不可欠と考え、自分の仕事のすすめ方が整理でき、学校における会議時の提案資料に活用ができるツールを検討しました。他職員との関わり、そこに生じる財源、期待される効果、校長会・地教委に協力要請が必要な点を記載できる実効策検討シートを用いて、現在、学校における課題を具体的に出し、同じ課題に対してどのように切り込んでいくか、グループ討議を通して、個人では越えられなかった壁を越える手立てを探っていきます。

<成果と課題>

実態調査を基に改善策を検討する中で、周囲の環境によってできないと諦めるのではなく、自発的に取り組もうという意識が持てるようになってきました。

会員よりステップアップできない理由として校内の事務職員参画に対する体制が未整備、学校事務職員の位置づけが教委からなされていないという学校組織の問題や、心身・時間の余裕不足、相談相手がいないといった事務職員配置の問題が挙げられています。

事務職員だけでは解決できないこともありますが、原因を知ることによって少しでも改善できることが見えてきます。そのためには、経験年数がさまざまな事務職員で構成されるグループでの話し合いが効果的ではないかと考えます。石川県には、共同実施組織はありません。実践の受け皿として、地区研究会、県研究会がどのような役割を果たしていくか踏み込んで探っていきたいと思います。

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